自惚れ男子の取説書【完】

あの朝。

無我夢中で帰宅した私は、何も出来ずただただ呆然と1日を過ごした。何度か鳴るスマートフォンも早々に電源を落とした。
後から見ると、何度も小田さんから着信とメールが入っていて…とてもじゃないけど出られる状況じゃなかった。

1人泣きすぎたお陰でパンパンに目は腫れ、擦りあげた鼻は赤くなり。
明日は仕事だからと重い腰をあげたのも遅すぎて、冷やした効果は大して得られなかった。


「何……そのぶさいくな顔はっ…!」

メガネとマスクでほとんど顔を隠してみたけど、美沙にはバレバレで。顔の事より何よりも、1人で泣いた事を怒られた。


「なんであんたは…私呼ばないのよっ!ばか!」

「だって…ほら、日勤だったでしょ?」

違う。ただ単に何も考えられなくて、美沙に頼る事なんて思い付きもしなかった。

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