自惚れ男子の取説書【完】
早く……忘れなきゃ。
チコリが食べられなくって、実は片付けが苦手で。不機嫌そうに眉をよせるのも、照れるとすぐ耳が赤くなるって事も。あの落ち着くテノールの声、不器用な優しさ……。
違う私に、なるんだ。
少女マンガにありがちな展開。昔からなんとなく続けていたロングヘアを、私はばっさりと切り落としてもらった。
本当はショートヘアまで極端に変えてしまいたかった。けど、バカな私は無意識に美月さんと重ねて見てしまうから。
それでも20センチは切ったであろう自分の髪を見て、どこか気持ちは軽くなっていた。