自惚れ男子の取説書【完】
ラウンドの途中、洗面台の鏡の前でふと立ち止まる。ボブヘアの新しい私はぐいっと口角をあげ、気合いを入れた。
コンコン
「松山さん、失礼します」
ぐったりとベッドに横たわる松山さんは、目を閉じ眉根を寄せひたすら厳しい表情だ。
「痛み…どうですか?」
答えるのも辛いらしく、小さく頷いて見せる。
術後まもない松山さん。沢山の点滴とチューブに囲まれた姿は痛々しく、ただ寝ているだけでも体力を消費しているようで呼吸は荒い。
「松山さん、経過をみるために採血させてくださいね」
「……また?」
深い眉間が更に深まる。
朝からの度重なるチャレンジに、後輩はもちろん松山さんも疲れ果てているみたいだ。
「何度もごめんなさい」
蒸しタオル片手に両腕をくまなく探すと、どうにかそれらしい所を見つけチャレンジ。緊張しながらも1回で採血を済ませ止血していると