自惚れ男子の取説書【完】

「気持ちはわかるけど、ね。無理に忘れる必要ないんじゃない?仕事の時さえ他の患者さんの事考えてあげられれば良いのよ」

「そう…ね。うん。仕事はちゃんとやる」


こういう時の美沙の言葉は、ほんと的確だ。
忘れる必要ない、か。しばらくは善次郎さんの思い出に浸っちゃいそうだ。




「あ、ほーだ!ほろみさぁひんようひま?」

思い出した勢いのまま、焼き鳥を頬張りながら美沙が話す。


「え?何、金曜?」

ゴクンとビールで流しこむと、可愛いらしい顔に似合わずプハーと息をついた。見た目はモテ子なのに、美沙の中身はどうしようもないおっさんだ。







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