自惚れ男子の取説書【完】

あくまで平静を装ったつもりだったんだけど、相手は名波先生先生。微かに寄ってしまったであろう私の眉間を見ると、くくっと肩を揺らした。


「ははっ、冗談だって。頼まれただーけ」

「えっ…頼まれたって……あ。」

そんな事しかねないのは、美沙だけだ。
帰る時美沙にも声をかけて帰ったから、きっと心配して頼んでくれたんだろう。


「み…横田さん、ですか？」

「正解。いやぁ、辻さん愛されてんねぇ……羨ましい」


ふっと笑う名波先生は、少しだけ寂しい顔をしてみせた。ふいをつかれたその顔に、思わず動揺して露骨に目が泳いでしまった。

「だから、辻さん分かりやすいって。もう少し隠しなさいよ」

「うっ……すみません」