自惚れ男子の取説書【完】
「そ、金曜。第1内科の律子わかる?私、大学の同期なんだけどたまにはご飯行かないかって」
「あぁ、りっちゃん!私、アドレス交換したわ……って、美沙?」
淡々とタコわさを口に運ぶ美佐をギロリと睨む。軽く肩を竦めると、はいはい…と美沙は降参したように口を割った。
「何よ、琴美合コンだって言ったら来ないでしょ?たまには息抜きしようよー!ただの飲み会じゃん」
「やだよ!初対面の人と何話せっていうの、めんどくさい」
「あんたね、看護師がそれいってどうすんの!患者さんだって初対面の人でしょうが」
美沙のするどい突っ込みにうぅっ…と言葉を失う。とはいえ、簡単には引き下がれない。
「あ、金曜!私その日、夜勤代わってって言われてた気がするー」
「分かる嘘つかないの!あんた、研修の代休で休みでしょっ!!」
万事休す。苦楽を共にしてきた同期には、ちゃちな嘘なんて通じなかった。