自惚れ男子の取説書【完】
顔もあげられず俯く私。
ぐっとはりつめる空気。誰も何も口にすることなく、どれくらい経っただろう。正確には数分も経っていないのかもしれない。重苦しい雰囲気の中、口火をきったのは美月さんだった。
「辻…さん?お久しぶりです、お仕事の帰りですか?」
「あ…は、い」
「遅くまで大変ですね。私達も病院からの帰りなんですよ」
ね、と小突く美月さんとは対照的に、小田さんは冷たい視線を私と名波先生へと向けていた。
こんな小田さん見たことない。
人に厳しい小田さんだけど、こんな蔑むような視線をおくるなんて今までなかった。まして、それを向けられる事なんて考えもしなかった。