自惚れ男子の取説書【完】
優しく腕を引かれ、駐車場の隅まで誘導される。
人目から隠すように、名波先生は私のすぐ左に立った。
「良かったの?あの人、元彼とか?」
「…っ…違っ……です。元彼なんかじゃ」
「え、そうなの?俺てっきり…」
元彼なんかじゃない。
私と彼の間にそんなはっきりした関係なんてなかった。
小田さんには美月さんがいる。私となにかあって良い訳ない。
”これがお前の答えなんだろう?”
駅を使うのに何か期待しちゃうのも、あのマンションを見上げることも…もうやめよう。
私と小田さんを繋ぐものは…全てなくなった。