自惚れ男子の取説書【完】

渡り廊下の横には中庭が広がっている。ガーデンテーブルやベンチが置かれ、動ける患者さんの定番お散歩コースだ。

何の気なしに中庭を見ると、テーブルでお茶を楽しむ親子。お花を楽しむ子供連れに思わずほっこりと頬が緩む。

…と、渡り廊下の終わり際、ベンチに座る背中に目が止まった。

患者さん用の寝衣に上からカーディガンを羽織った女性。ピンと伸びた背中に、少し白髪混じりの頭はサイドで緩くまとめられ、後ろ姿ながらに清潔感を感じた。

正直、入院中の患者さんはどうにも無頓着になりがちだ。それどころじゃない…というのもあるけど、こうして綺麗な女性を見ると不謹慎だけど素敵だな…とか思うのだ。

そんな勝手な評価を知るはずもなく、夕暮れをのんびりと眺める背中。

「あっ…!」
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