自惚れ男子の取説書【完】

「何言ってんの。辻さんにこんなごますり効かないなんて、とっくに知ってるよ。辻さんに会わせるように、今日は病院来ても良いって言ったんだから」

「父さんっ!し、失礼だろ。ったく…ようやく面会来ても良いって言うから来たのに…」

「当たり前だ、男なら仕事しろ。母さんが居ればお前なんぞ来なくていいんだ」

代わって唖然と立ち尽くしたのは私だ。

話からすると…松山さんはわざと息子さんを面会に来させていなかった。けど、私と会わせる為に今日は許可を出した…と。

「ふふっ、辻さんごめんなさいね。主人の勝手な戯言だから、気にしないで」

「は、はぁ…」

優しくフォローしてくれる奥さんだけど、話を否定はしてくれない。
松山さんの担当としてかなりスパルタしてきたつもり。気に入られるような事は何もしてない…はず。

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