自惚れ男子の取説書【完】
渦中の地味男…松山さんの息子さんが病院に来るようになって1週間程が経った。あれから既に3回は面会に訪れ、その都度挨拶する程度に顔をあわせている。
何があったって訳じゃないんだけど、毎回挨拶する度に頬を赤く染められ声が上擦ってるんだもの。さすがに私でも何となくわかるもので、美沙に言わせてみれば「次あたりご飯でも誘ってくるでしょ」だそうだ。
「まぁねぇ…あの彼に比べれば、大抵の男は地味なんじゃないの?」
名波先生の意味深な一言に、私も美沙も一瞬動きを止める。
「あれ、俺何か言っちゃいけないこと言った?」
ん?と頬杖をつく名波先生は、極上スマイルを添えて私を見てきた。言葉と裏腹、絶対この人悪いと思ってない…
ガンッ
「ちょっと!何であんたって人はそんなデリカシーの無い事言うのよ。大体、現場に居合わせたんなら何となくわかるでしょ!空気読め、空気!」
テーブルを叩き勢いよく立ち上がった美沙は、握りしめたフォークをぶんぶんと名波先生へと向け怒り爆発だ。