自惚れ男子の取説書【完】

美沙の毒舌も何のその。さらりと受け流しつつ、先生は相変わらずストレートに口説こうとする。それに釣られて騒ぎたてる美沙は、いつもの合コン仕様とは違って完全に素の状態だ。


「美沙って、先生といる時いっつも楽しそうだよね」

くすっと笑い混じりに呟くと、大きい目を全開にした美沙にギロリと睨まれた。

「はぁ?冗談。イライラしてるの間違いでしょ。訳分からない事ばっかり言ってさ、琴美までやめてよね」

「またまたぁ。何だかんだ言いながら、絶対無視はしないんだから横田ちゃん優しいよね」


へらへらと嬉しそうに笑う先生、怒りと呆れの混じった視線を送る美沙。そんな二人を見てると、思わずぷっと吹き出してしまった。

やっぱりこの二人…いいかも。

自分の恋愛はしばらく休もう。疲れきった気持ちに蓋をして。賑やかな二人に乗せられるように、甘い一口を頬張った。
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