自惚れ男子の取説書【完】
今日は世間でいう3連休の1日目。この仕事をやっていると曜日感覚が鈍くなるからいけない。
「退院前に1度外泊しておきたい」という患者さんからの希望で、昼過ぎには家族が迎えにきた。
外泊中の内服薬や処置を一通り確認し、家族と一緒に患者さんを正面玄関まで連れてきた所だった。
移動はできてもやはり車椅子が安心だろう、ということで手配された介護タクシー。車椅子のまま乗り降りできる専門車が最近では増え、患者さんの外出がしやすくなったみたいだ。
「これ許可書です。無理しないで、何かあったらすぐに連絡くださいね」
「ふふっ、ありがとう。いってきます」
少しよろけながらもレンタル用の車椅子に乗り換えると、嬉しそうに笑う患者さん。
期待と不安。もしもの事を考えて緊張する家族をよそに、本人はただただ嬉しくて仕方ないみたいだ。
手を降る彼女と家族に一礼し、タクシーを見送った。