自惚れ男子の取説書【完】

10号室アラームの主は、今日手術を終えて病棟に帰ってきたばかりだ。術後は当たり前に処置が多く、身体中のチューブ管理や頻回な検温。まだまだ慣れない後輩は、それだけで今日はいっぱいいっぱいのようだ。

「そうですね。私、朝は多分余裕あるんで加藤さんフォローまわります」

「了解、私もキリ良い所で手伝い行くわ」

キリ良い所…ってのも結局は私より断然早く終わってしまうんだろうな。
先輩の余裕たっぷりな様子が想像できて、思わず苦笑する。


「さぁて辻さん、記録も一段落したことですし」

「あー…はい?」

「まぁ、ぶちまけてみたらどうかしら?」


どんな動揺もこの人には関係ないのかもしれない。
澄んだ目と穏やかな微笑みは、まるで私の全てをまるっと包み込んでくれそうだ。

「ぶち、まける…ですか?」

「まぁ無理にとは言わないけど、昨日のは見てらんなかったからね。今日ももしかしたら勤務変更か!って思ったぐらいよ」
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