自惚れ男子の取説書【完】

はしゃぐ由美さんと、そんな母親につっこむ美月さん。そんな親子を前に、私はただ張り付けた笑顔をどうにか保つしかなくて。
美沙のおかげで浮上していた気持ちも、あっけなく一瞬で深い深い底へと突き落とされた。


結婚するんだ……小田さん…。


さっきまでの穏やかな空気は一転し、私の周りだけが時間が止まってしまったみたいだ。座ったままひどく目眩がするように世界はぐるぐる回り、ひとりぼっちで取り残されていく。


「結婚…されるんですよね?おめでとうございます」

「えっ…お母さんそんな事まで話したの!もう恥ずかしい。ありがとうございます、何か照れちゃうな」

美月さんは少し顔を赤らめ、はにかんだ笑顔を見せた。
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