自惚れ男子の取説書【完】

約束の時間ちょうど、美沙は駅ビルの壁にもたれかかりすらりと長い脚をもて余すように交差させていた。タイトスカートにフリル袖のブラウス、キレイに髪を巻いた美沙はナンパ男の誘いを無視して携帯をいじっているところだった。

男が諦め立ち去るのと入れ替わるように美沙に駆け寄った。


「美沙お待たせ、大丈夫だった?」

「もぉ!あいつほんとしつこい、苛つく!」

むすっとキレイな顔を存分に歪ませ、苛立ちはほぼ頂点まで達しているようだ。いつもならさっさとその場から立ち去るところだけど…

「少し遅れるって連絡あったから、もう少し待つわよ」

「へ?え、まだ誰か来るの?」

黙ったまま頷く美沙は、余程苛立っているらしい。誰が来るのか教えてくれそうもない。
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