自惚れ男子の取説書【完】
「りっちゃん!それ、それって!」
私が釘付けになったりっちゃんの手。その視線の先に気付き、「あ…これ?」と照れ臭そうに手を広げてみせた。
「まだ付き合って日も浅いんだけど。つけるよう頼まれちゃって、へへ。なんか恥ずかしいんだよね」
「単に石川の独占欲でしょ?律子ったら優しいわねぇ」
「美沙ってば。だって石川くんつけて欲しいって買ってきちゃうんだもん」
「律子にあいつじゃ役不足だと思ったんだけどね。とりあえず浮気の心配はなさそうだし、律子が良いなら良いのよ」
声が追い付かず、ただただ顔ごと二人の会話を追うので精一杯。ようやく声が出る時には、思わず叫んでいた。
「いっ…石川くん!って、あの石川くんなの!」
「琴美落ち着け。まず座りなさい」
勢いのまま立ち上がった私を諌めるよう、美沙はどうどう…と肩を抑えた。