自惚れ男子の取説書【完】
私だってそう思いたかった。そう信じようとした。
そんな小さな希望をうち壊すみたいに、至るところに美月さんの存在があった。
マンションに残された化粧品
違和感なく隣を歩く二人
結婚を喜ぶ由美さん
脳裏に浮かぶ色々に蓋をするようギュっと強く目をつぶる。
「二人ともありがとう。もう十分…だよ」
きっと私いま、泣きそうな顔してる。
小田さんに会いたい…でも会って無視されるのが怖い。
話したい事は沢山ある…でも何て話せばいいのか分からない。
行き場のない感情と、それをもて余すしかない自分が情けない。
辛うじで小さく呟いた私に、二人はそれ以上何も言わなかった。