自惚れ男子の取説書【完】

 3


石川くんとの約束があるりっちゃんと駅前で別れ、私と美沙だけが時間をもて余していた。


「どうする?私なんもないから、行きたい所あるなら付き合うよ?」

この”付き合うよ”は、いつもなら”道案内するよ”という意味。相当通い詰めない限り道に迷ってしまう私には、道案内が必要だ。

でも今日は…

「じゃあ靴!来るとき素敵なお店見つけたの」


通り沿いにあったレトロな靴屋。あそこならそう迷わず行けるだろう。

「え、大丈夫?わかんなくなったら早めに言ってよね」

私が案内するなんて珍しい。

そんなわくわく感で鬱々した気持ちを振り払うように、どこか不安げな美沙の手をとった。
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