自惚れ男子の取説書【完】
ダークブラウンの木製扉には、上半分にガラスがはめこまれ。その細かい細工がまた、お店の雰囲気を演出していた。
「わぁ……」
少し重い扉を開けると、店内は扉と同様ダークブラウンの木製の棚が並べられていた。
その辺の量販店に比べると、かなり数は少ない。それでもレディースにメンズ、ハイヒールからバレエシューズに至るまで数種類の靴たちが品よく並べられている。
まるで異国の工房にでも来たみたいな、レトロモダンな雰囲気に思わず声がこぼれる。
沈みきっていた気分も忘れ、すっかりお店の雰囲気に魅せられていた。
奥半分はどうやら作業スペースらしい。見たことのないミシンや沢山の木靴に糸が並んでいる。
単なる飾り?もしかしたら修理ぐらいならやってくれるのかも。
ぐるり店の雰囲気を堪能すると、真剣な眼差しで物色する美沙に倣うよう靴を手に取った。