自惚れ男子の取説書【完】
気になった靴を手にとって見ると、量販店に比べれば数千円高い程度の値段だ。
「どうしよ。これスゴい履きやすいの!うっかり買っちゃいそう」
そう言いながら2足のパンプスとにらめっこする美沙は、2足とも買っちゃいそうな勢いだ。
「色ちがいもお出ししますので、おっしゃってくださいね」
そう控えめに声をかけてくれた店員さんは、意外にも少し年配の人だ。60代まではいかない位だろうか。余計な話をしようとはせず、はしゃぐ私達を微笑ましく見ているくらいだ。
ギィッ
私達が入って以来、初めて扉が軋む音がした。
背後に聞こえる足音から、どうやら1人みたいだ。それでもお客さんが来る事に勝手に安堵する。
こんなすてきなお店、つぶれちゃったら困るもの。