自惚れ男子の取説書【完】

そう。初めて入ったお店で、まさかこんな偶然があるなんて…

ほんと、なんかの呪いとか嫌がらせか。


見えない糸に絡みとられるみたいに、どこまでも私は彼の呪縛から逃げられないんだろうか。はぁっ…と思わず息を吐く。

しまった…失礼だったよね

そっと顔をあげると、変わらず優しい微笑みと目があった。


「うちにはもう…来てくれないかしら?」


それはきっと儲けるだとかそんな意味ではなくて、単に「もうあなたには会えないの?」そう優しく尋ねられているようだった。
優しい声色にはどこか憂いを帯びて、私の罪悪感をかきたてる。

「あ…の。行こう行こうとは思ってるんですが、そのぉ…」

「いいんですよ。怒ってるわけじゃないし、第一あなたはお客様なんだから。ただね」

一際優しい顔をして真っ直ぐ見つめられる。
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