自惚れ男子の取説書【完】


「すごく…寂しそうだったわ」


泳がせていた視線がビクッと揺れる。

「普段無口な人が無駄によくしゃべってね。楽しくしゃべってたと思ったら、黙りこくって情けない顔して。長い付き合いだから見てられなくてね…」


寂しそう…って小田さんが?

なんで寂しいの?1人なのは私のはずなのに。
小田さんには……居るじゃない。

困惑とぶつけ所のない怒りすらこみ上げて、握りしめた拳がぶるっと震える。

「ごめんなさい、こんな事言っても困るわよね。ただ小田さんまた忙しくなるみたいだったから」

「いえ…そうなんですね」


ほの暗い感情が漏れないようにする事に集中しちゃって、必然的に答えるのも棒読みになる。

そんなこと私に教えてどうするんだろう。どうにもならないし、どうにもできない。
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