自惚れ男子の取説書【完】
さぁっ……
と意気込んだものの。呼吸を整えるうちに、当初の勢いは尻すぼんでしまった。
そもそも…いるのかな、小田さん。
思い立って携帯電話を取り出したものの、きっちり連絡先を消してしまっている事を思いだす。
あぁ…詰んだ。
別に着信拒否とかも出来たろうに。なんでわざわざ消すかな、私。
ふと駐車スペースを確認すると、小田さんのスポーツカーは無くなっている。
それもそうか。海外へ行くなら車を手放したのかもしれない。
もうここに住んでいない可能性だってあるんだ。
ようやく冷静になり、あまりに無鉄砲すぎたことに気付く。
とはいえ、これ以外に彼と繋がる方法は思い付かない。
すーっと深く深呼吸すると、意を決してエントランスへと足を向けた。