自惚れ男子の取説書【完】
ピンポーン
確認するように深々押したインターホンがチャイム音を鳴らす。
永遠にも似た数秒……残響がひびくだけで、小田さんの応答はない。
「……っは…!」
無意識に止めていた呼吸を解放させると、大きく肩の力が抜けた。
やっぱり…いないのかも。
自分に念押すみたいにもう一度鳴らしてみても、結果は同じだった。
何て伝えればいいだろう。そんな心配も無に帰してしまい、何とも呆気ない結末に呆然と立ち尽くす。
私ってば、どこまでバカなんだろう。
一気に急降下する感情。
それを後押しするみたく、自動ドアが開く気配と同時に生ぬるい風が私の背中に吹き付けた。