自惚れ男子の取説書【完】
「なにしてんだ」
いつかと同じ不機嫌に響く声。振り返ると、静かな足音と共に小田さんが近づいていた。
睨み付けてくるそれは私の視線とは合わせず、私という存在を全身で拒否するみたいだ。
「あ…の、すみません」
「帰れ」
何を聞くでもなく、私との接触をなかったことにするみたいに。ただそれだけ発すると、小田さんは私の横をスッと避けていってしまう。まるで私なんて知らない人みたいに。
……やだ。
気付けばむんずとTシャツの裾を掴み、その身体を引き留めていた。
『なんのつもりだ』
そう言いたいんだろう。
力強い目を一層細め鋭く睨みをきかせると、ようやく私と目を合わせた。