自惚れ男子の取説書【完】


合コンの途中、私はトイレにいた。


うーん、と唸りながら自分の顔をむにっとつぶすと、右に左と代わり映えのない顔をチェックする。

そんなに違うか、ね?

確かに今日は自分なりにのしっかりメイク。そしてあの日は、夜勤ですっぴんの上に号泣して寝不足という三重苦。

女は化ける、って事で見た目は何とかクリア。けど名前は?失礼な女の事なんて忘れたかったって事?

それにどう思い出しても、あの日の彼とはまるで別人だ。

親しみやすいしゃべりに、極上スマイル。さりげなくおしぼりを渡してくれたりする優しさからは、間違っても『勘違い女!』なんて罵られる気がしない。


やっぱり、道端で熟睡してた私がよっぽど怪しかったんだよね。

そう1人納得すると、ようやくトイレのドアを開けた。


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