自惚れ男子の取説書【完】
「おせぇよ」
壁にもたれ長い足をもて余すようゆるりと交差させ、私を出迎えたのは小田さんだった。
「何だ?今度はトイレで寝てたとか?」
不機嫌そうなその一言が全てを物語っていた。
『お前の事、覚えてるぞ』と。
「い、いえ。ちょっと化粧直しを…」
「…直してそれなの?」
失礼極まりない発言に反論出来ず、とりあえず下から睨み付ける。実際、1人考え込んでただけで化粧直しなんてしていないけど。
「俺を待たせるとか、ほんとあり得ないんだけど」
なぜか私のカバンをその場で渡すと、小田さんはさっさと出入り口へと向かった。