自惚れ男子の取説書【完】
「わぁ、いいんですか!」
甘いものに小躍りする私をよそに、小田さんはネクタイを緩めながら寝室へと消えていった。
うーん……勿体ない。
滅多に見ない礼服姿。やっぱり小田さんスタイル良いし悔しいくらい様になる。
それも調子に乗るから言わない。第一言われ慣れてるだろうし。
「小田さーん。これ写真見てもいいですか?」
「あぁ、勝手にどーぞ」
自然とにやけるのを誤魔化すべく、わざとらしく大きな声で呼んだ。
小田さんの高そうなカメラには膨大なデータが入っていて、そのすべてが今日の結婚式の写真だった。ドレス姿の美月さんに由美さん、式場の装飾に至るまで……まるで業者みたい。
「めんどくさい」とか悪態つきながら、結局楽しみにしてたんじゃない。
素直じゃない小田さんに、ぷっと小さく吹き出した。
写真を遡るとチャペル前で腕を組む美月さんと小田さんの2ショットが写っていた。それもちょっとぶれていて、カメラに慣れていない誰かが撮ったのがすぐに分かる。