自惚れ男子の取説書【完】

今日の結婚式、小田さんは美月さんとバージンロードを歩いた……父親代理として。


2人の父親は3年前に他界したらしい。

10年前に離婚し、父親に引き取られた小田さん。母親に引き取られた美月さんとは、時折連絡を取り合っていたらしい。
仕事人間だった父親とはすれ違いで、亡くなった実感もあまりなかったと教えてくれた。


「おい、もっと良い写真あるだろ」

「ぅあっ…!びっくりしたぁ!」


いつの間にか着替えた小田さんが、気づけば至近距離でカメラを覗きこんでいた。

「なんだこれ。撮ったのあの人だろ、下手すぎる」


”あの人”…は由美さんのことだ。

よそよそしい言い方に最初は驚いたけど。

「罪悪感っての?償いたい…とか言うけどそれこそ勝手過ぎるのに、分かってねぇんだよあの人」

そう言って由美さんとの確執を匂わせつつも、由美さんの事を話す小田さんの目はいつも優しい。
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