自惚れ男子の取説書【完】
「ちゃんと歩けました?」
「ちゃんとも何も歩くだけだろ。俺の結婚式でもねぇし緊張する事でもないだろ」
そう悪態をつく小田さんの眉がぴくりと跳ねる。
まったく素直じゃない。
思わずふっと笑いがこぼれると、途端にギロリと睨みをきかされる。
「やっ、やっぱり美月さんキレイですね!これとかほらっ、雑誌みたい!」
「あぁ?違うわ、俺のカメラの腕だろ」
慌てて取り繕ろった言い方だけど、その言葉に嘘はない。
いつものボーイッシュな雰囲気とは売って変わり、ばっちりとメイクを施された美月さんは雑誌の切り抜きそのものだ。綺麗なデコルテの見える Aラインのドレス。レースのベールが神秘的で、女の私でもうっとりと魅せられてしまう。