自惚れ男子の取説書【完】
熱を持った唇に指をやり、その形を確かめる。
跡でも残ったらどうすんの……と文句の一言でも言ってやろうかと考えていると。
「ほぉ……そうかそうか」
ひどくキレイに微笑んだ小田さんが、いつの間にかスッと私の背後をとっていた。
あっ……と声をあげる間もなく、ぴたっと身体に巻き付けさせられた両腕。引き寄せられると同時に椅子から浮いた身体は、小田さんの腕の中にすっぽりと収まっていた。
「んなっ………!ちょっ、は?小田さん!」
「お前が悪い」
私を楽々抱えるとどすっとソファに下ろされた。視界には天井と、わざとらしくにっこり微笑む小田さん。その笑顔の胡散臭いこと…恐怖しか感じられない。