自惚れ男子の取説書【完】
鳩が豆鉄砲くらう、みたいな。
とにかく不意をつかれたらしく、小田さんは滑らせていた手をピタリと止めた。
「だっ……だって、私が結婚したくないのを怒ってるんでしょう?それって……小田さんは結婚したいって…」
おずおずと尋ねてみてもすぐに返事はなくって。
「小田さん……顔…赤い、ですよ」
その一言いい終えるか否かの瞬間、熱を持った唇は小田さんの唇で更に熱い熱を持たされてしまった。
どうにかそれを受け入れつつ、息を吸うのもやっと。拒みたいような辞めて欲しくないような、曖昧な力で小田さんの腕をぎゅっと握った。
ようやく唇を離しふと顔をそらすと、小田さんの影が私の顔にかかる。
「お前……まじ勘弁しろよ。久々会ったと思ったらよ、そういうの直球で聞くか?普通」
「だっ……!だって小田さんが急に怒るからでしょ。小田さんが悪い!」
「あぁはいはい、もうそれでいいや。肝心な事溜め込むくせに、そういう事は聞くのかよ…ったく。だから面倒なんだよお前」