自惚れ男子の取説書【完】
エピローグ-side 大和-
「ふぅ……」
息を吐いたのは無意識だった。
オーダーの礼服は長めの手足にも吸い付くようで我ながら悪くない。髪型もきめ隙ひとつ無いはずだが。
片手に大きな紙袋、もう片手には愛用のカメラ。それを握る手は気付けば少し汗ばんでいた。
何を緊張してるんだ…馬鹿馬鹿しい。
らしくない自分に自嘲気味妙に笑うと、黒レザーのキーケースを取り出した。
ガチャッ
いつもの金属音のあとパタパタと近づく軽い足音。
「……お、おかえりなさい」
「ん」
へへっと照れた顔にちらりと視線をやると、つられてこちらも緩みそうになる。慌てて視線をそらすと、誤魔化すようにネクタイを緩めた。
危ない……どうもこいつには調子が狂う。