自惚れ男子の取説書【完】
小田さんのマンションは、自宅から駅へ向かう途中にある。当然、利用している駅は一緒な訳で、送ってもらうには都合が良い。
駅まで送ってもらい「ではここで…」と別れようとすると無言で睨まれた。
キレイな顔のひと睨みは想像以上に恐ろしい。結局逆らえず、いつもの道を進む。
心配しなくても、「送ってもくれない嫌な奴だった!」なんて言いふらさないのに。
途中彼のマンション前を通り過ぎる時、再び期待したけどそれも無駄だった。いつかのブロック前には、有名国産メーカーの黒いスポーツカーが停まっていた。
なんであんな所座っちゃったんだろ…。
どこでも眠れる自分の図太さは棚に上げ、腹が立つ程ピカピカの車をこっそり睨んだ。