自惚れ男子の取説書【完】
そうして今、自分のマンション前で小田さんと向き合っている。
「ここです。わざわざありがとうございました」
嫌々ながらも送ってくれたのには違いない。きちんとお礼は言っておこう。
私の殊勝な態度をほぼ無視。小田さんは「ふーん」とマンションを見上げた。
「これで安心だな」
「はぁ…安心?」
「そう。結局名乗るはめになったし。名前だけじゃなくて、あんたの家も抑えとけば安心でしょ?」
そう言うと、小田さんは満足そうに笑った。
絶句。
どんだけ自分がもてると思ってるの…?
いやそれより、どれだけ私の事危ない女だと思ってるのよ。
たった今さげた頭を返してほしい。
発狂しそうな怒りで肩を震わせる私をよそに、小田さんは1人さっさと帰っていった。