自惚れ男子の取説書【完】
看護師の仕事はハードだ。
患者さんを運ぶ肉体的な負担と、悲しい現場を乗り切る精神的負担。何より、人間相手の仕事だし全てにおいて予定どおりに行くとは限らない。
今日も「俺はもう退院できる!いや、する!」という患者さんの無茶な主張をどうにか言いくるめ、何とか転院という形でその場をまとめた。
本来担当の先輩看護師は長期休暇中。急遽必要になった転院書類は、預かっていた私が書くしかなかった。
帰宅する頃には外はもう真っ暗。人の居ない裏口を出ると、空にむかって思いっきり背を伸ばした。
「んあぁー…」
情けない声とあくびが思いの外大きくて、念のためきょろきょろと周囲を見渡す。
ま、面会時間も過ぎてるし。通るっていっても、職員ぐらいだよね。別にいっか。