自惚れ男子の取説書【完】
ふふっと相変わらず穏やかに笑う奥さんが、ふと私の隣に視線をやった。
「あら、もしかして…辻さんのお相手かしら?」
「小田と申します」
慌てて否定する私を遮るよう、スマートに小田さんが挨拶する。見ればいつかの営業スマイルで丁寧にお辞儀している。
「主人と話してたのよ?もし息子がいたなら、お嫁にきてほしかったわねって、ふふ。心配ご無用だったのね」
「そうですか。それは、息子さんがいなくて助かりました」
あらまぁっと照れる奥さん、ははっと笑う彼氏役の小田さん。
何だ、この疎外感。
ついていけない私ほ1人ぽかんと見守った。