自惚れ男子の取説書【完】
「患者?…本当に?」
何でそんなしょうもない嘘つくと思うんだろ。
イケメンの思考はよく分からないなぁ…と、黙って頷いた。
「んだよ…どうりで渋い名前…」
「え?あぁ、善次郎って渋い名前ですよね。私、渋い名前好きですよ」
さて、と気持ちを切り替え歩き始めた私をよそに小田さんは動き出さない。
片手で顔を多い何だか声にならない程度に唸っている。よっぽど私より危ないって言ったら怒るだろうな。
「小田さん、私帰りますけど…」
「あぁ?俺も帰るっての」
ガバッと顔をあげると、小田さんは何事もなかったかのようにその長い足をすすめた。