自惚れ男子の取説書【完】



「あの、何で私はここに…?」


男は私の質問には答えず、カウンターの前に並ぶ2人がけのテーブルに料理とコーヒーを置くと、無言で食べ始めた。

人の話位聞けよ!

失礼な態度にイラっとしながら、ふと男の髪が濡れているのに気づく。
はっ!?と慌てて自分の服を確認すると、相変わらずくたくたのカットソーとウエストゴムの楽チンデニムに乱れた所はなく思わずほっ…と息を吐いた。


「…アホか」

なんなのコイツ!

「あなた、どちら様ですか?」


今度は語気を強めに聞いてみた。

こういう得体のしれない人には、弱気じゃダメだ。ふんっと鼻息荒く、男にむかった。



< 5 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop