自惚れ男子の取説書【完】
「あの、何で私はここに…?」
男は私の質問には答えず、カウンターの前に並ぶ2人がけのテーブルに料理とコーヒーを置くと、無言で食べ始めた。
人の話位聞けよ!
失礼な態度にイラっとしながら、ふと男の髪が濡れているのに気づく。
はっ!?と慌てて自分の服を確認すると、相変わらずくたくたのカットソーとウエストゴムの楽チンデニムに乱れた所はなく思わずほっ…と息を吐いた。
「…アホか」
なんなのコイツ!
「あなた、どちら様ですか?」
今度は語気を強めに聞いてみた。
こういう得体のしれない人には、弱気じゃダメだ。ふんっと鼻息荒く、男にむかった。