自惚れ男子の取説書【完】
「迷惑じゃないから」
頭上から優しく響く声。
「だから、心配かけさせんな」
あれだけ嫌な人だと思ってたのに。
優しい声は何でか簡単に胸にすとんと落ちて。少し乱暴な言葉も、何でかふんわりと温かい気持ちにさせた。
単に怒ってたんじゃない。心配してくれたんだ。
「ありがとう…ございました」
ん、と応えた小田さんの耳が少しだけ赤い気がした。言うと絶対怒るから黙ってたけど。
暗い夜道、ほっとする温もりを右側に感じながら肩を並べて歩いた。