自惚れ男子の取説書【完】
日曜日なのに仕事があるって言ってたっけ。きっと1度帰ったんだろう、現れた小田さんはカジュアルな服装だった。
グレーのVネックにデニム。足元はスニーカーと完全オフスタイルだ。それでも彼のすらりとしたスタイルにキレイな顔立ちは、十分に雑誌の切り抜きみたいに思わせた。
「へぇ、ちゃんとした服持ってんだな」
「まぁ…小田さんと一緒なんで、ははっ」
私は黒のワンピースに7センチヒールのパンプス。めんどくさがりの私には珍しく頑張ったつもり。
だって小田さんと一緒なんて、絶対好奇の目に晒されるってわかってたから。気合い入れない訳にいかないでしょ。
「ふーん。俺に合わせて?」
小田さんは何でか嬉しそうに片方の口角をくいっと上げ、まじまじと私を観察した。
気合いを入れたとはいえ、そこまで見られたんじゃ居たたまれない。
「ほらっ!小田さん、映画遅れますよ」
何だかくすぐったい視線を振り切るよう、ヒールを鳴らした。