自惚れ男子の取説書【完】
当然のように小田さんは扉を開けると、顎でくいっと中へ入るよう促される。
軽く会釈して入った店内は、思ったよりこじんまりとしていた。温かみのある木製家具で統一され、所々に置かれた照明や観葉植物が落ち着いた雰囲気を作っていた。
「素敵なお店ですね」
「だろ?料理もうまいぞ」
小田さんに注文を任せると、顔見知りであろう女性の店員に手早くオーダーした。
「小田さん、久しぶりね。嬉しいわ」
「ご無沙汰してます。仕事忙しくて」
一世代は上であろう女性と話す小田さんは、とても穏やかに笑う。親しげな様子からみて、かなり常連なのかもしてない。
その様子を見て、ふと府に落ちなかったもやもやを思い出した。