自惚れ男子の取説書【完】
「はぁ…大変なんですね、もてるって」
「そうなんだよ、お前には分からんだろうがな」
何かもう突っ込む必要もなく、ただ感心する一方。
ただの自惚れってだけじゃなく、彼なりに悩んで苦労してきたんだろう。
「女は基本、裏で何考えてるかわかんねぇからな。ってか、お前女のくせに分かんねぇの?だからさっきの映画で泣けんだよ」
「そ、それは関係ないじゃないですか!!あれは泣けるでしょ?彼女可哀想だったじゃないですかっ!」
「バカ。あんなしたたかな女のどこが可哀想なんだよ、恐ろしい」
一緒に見た映画の後半、私は泣き通しだった。
彼の為に嘘をつく彼女、それに気付かない彼。彼を狙う別の女…と、ありがちな恋愛モノ。それでも彼女が可哀想すぎて、隣を気にする事なく鼻をすすった。
ハンカチ片手に滲んだ視界でエンドロールを見送る。人の動きに合わせてふと隣を見ると、小田さんが”あり得ない”って顔でこちらを見ていた。