自惚れ男子の取説書【完】
「どしたのよ、琴美。体調でも悪いの?」
自分で言うのもなんだけど、普段の私は仕事が早い。
5年目にもなれば仕事は慣れたもの。いつもなら今頃、自分の仕事は一段落させ後輩のフォローにまわっているはずだ。今日に限っては、そんな余裕なんてない。
「体調は大丈夫」
「”は”って何よ、”は”って」
おもちゃを見つけたような楽しそうな顔をして、美沙が私の顔を覗きこむ。
「うっ…な、何もないってば」
「何もない訳ないでしょ。どうせ黙っててもすぐバレるんだから……吐け」
最後の一言、くわっと目を見開いた美沙。可愛い顔が台無しだ。