自惚れ男子の取説書【完】
「あの、辻 琴美(つじ ことみ) と言います。すみません、何かすごくお世話になってしまったようで」
「そうだな」
それだけ言うと、男はカチャカチャとフォークを動かし黙々と食べ続ける。
…それだけ?
「あの、お名前は?」
「善意溢れる通りすがりの男A」
「あの。お世話になった方のお名前位聞かせてはもらえませんか?」
何なの?冗談?
めんどくさそうに話す男の態度はどうにも気にくわない。文句を言えた義理じゃない、ひきつった笑いをはりつけた。
「やだ」
…は…?