Colorful lovers
「どしたの? 先輩」
「あ? ……あー、あれだ。そう、あれ。
あれ、あれ……あー、煙草!
煙草買い忘れた」
大人らしくないはしたない行動を無理矢理ごまかしてヒラヒラと手を振ってみせると、ぴーこはあっさり納得してくれたようだ。
「ああ、煙草? 買ってきましょうか」
「バカ。未成年に頼めるわけないだろ。
他にも買いたいものあるからちょっと隣のコンビニ行ってくる。
ぴーこ、いつも通り授業始まるまでに……」
「板書ですよね。今日は225ページ?」
すべてを言わなくてもきちんと指示を理解してくれるぴーこは優秀な補助員だ。
俺の恋心は砕け散っても俺たちの関係性は変わらない。
俺はぴーこにとって目標とされる先輩であり続けなくてはいけないのだ。
「224ページの最後の段落から書いといて」
「了解です。じゃ、先に戻ってますね」
ぴーこはペコリと頭を下げてから小走りで去っていった。
その足取りも羽が生えたみたいに軽やかで、その後ろ姿に俺はこっそりため息を漏らした。
しばらく傷が癒えるまではしんどい日々が続きそうだな……。