Colorful lovers
「……マジでコンビニ行こ」
重い腰を上げて伸びをする。
煙草を忘れたなんていうのはもちろんウソだ。
煙草は俺にとって3度の食事と同じくらい定期的に補充しなくてはいけないガソリンみたいなものだ。忘れるわけがない。
でも今は煙草より思い切り苦いコーヒーが飲みたい。
首をコキコキ鳴らしながら、俺は先ほど入って来たばかりの自動ドアを逆戻りしていった。
「はぁぁぁ……」
コンビニでテイクアウトのホットコーヒーを買ってきて、予備校には戻らずそのまますぐ目の前のガードレールに腰を下ろした。
2月も半ば。
暦の上では春の足音が聞こえ始めてもいい頃かなと思うけど、その気配は全くない。吐く息は真っ白だ。
ただ、日はずいぶんと長くなった。
オレンジ色に染められたアスファルトに長い影が浮かぶ。
正面にそびえ立つビルをぼんやり見上げた。
ほんの数ヵ月前、ぴーことここで出会った時のことを思い出す。
出勤時、予備校の前に思い詰めたような表情で立ち尽くしていた1人の女の子。
私服姿だったけど、当然入学希望者だと思った。