Colorful lovers
「はぁぁー」
藍色が濃くなりつつある空を見上げて大きくため息を吐き出した。
コーヒーを飲み干した直後、煙草をくわえて火をつける。
苦いコーヒー。
苦い煙。
苦い想い。
「ははは……。 三重苦だ」
ヤケクソ気味に1人ごちて笑ってしまった。
まさか、ぴーこの相手が工藤シンタだったとは。
俺が連れ去ろうかと画策していたぴーこを俺の前から鮮やかに連れ去った男。
わざわざバイト先まで乗り込んできたぴーこの男を一目拝んでやろうと、
彼女が忘れていったスマホを片手に乗り込んだ。
嫌みのひとつでも言って宣戦布告をしてしまおうか、ともちょっとは考えてた。
相手の様子次第では。
でも、ぴーこの相手がシンタだと知った途端に俺の中で白旗が上がった。
敵うわけがない。
兄である日吉が全幅の信頼を寄せる親友。
そして、俺だって一目置いていた男だ。
俺が言葉でしか励ますことができず、立ち直るきっかけすら与えてやれなかった日吉を
言葉だけじゃなく行動でもしっかり支えて再生させたやつ。
それが工藤シンタ、だ。
ぴーこの相手として最高に相応しいじゃないか。