Colorful lovers












「はぁぁー」



藍色が濃くなりつつある空を見上げて大きくため息を吐き出した。


コーヒーを飲み干した直後、煙草をくわえて火をつける。




苦いコーヒー。

苦い煙。

苦い想い。





「ははは……。 三重苦だ」


ヤケクソ気味に1人ごちて笑ってしまった。



まさか、ぴーこの相手が工藤シンタだったとは。


俺が連れ去ろうかと画策していたぴーこを俺の前から鮮やかに連れ去った男。


わざわざバイト先まで乗り込んできたぴーこの男を一目拝んでやろうと、
彼女が忘れていったスマホを片手に乗り込んだ。


嫌みのひとつでも言って宣戦布告をしてしまおうか、ともちょっとは考えてた。
相手の様子次第では。


でも、ぴーこの相手がシンタだと知った途端に俺の中で白旗が上がった。



敵うわけがない。



兄である日吉が全幅の信頼を寄せる親友。


そして、俺だって一目置いていた男だ。


俺が言葉でしか励ますことができず、立ち直るきっかけすら与えてやれなかった日吉を
言葉だけじゃなく行動でもしっかり支えて再生させたやつ。


それが工藤シンタ、だ。


ぴーこの相手として最高に相応しいじゃないか。



< 28 / 96 >

この作品をシェア

pagetop