Colorful lovers
「ごめんなさい…。
ずっとそこから様子見てたんだけど
ガリバー、何回もため息ついてるようにみえたから……」
俺の前で恐縮したように縮こまっているのは、
広瀬 里花(ヒロセ リカ) 。高校文系の2年生。
「だからって急に駆け寄ってきたらびっくりするだろうが。
第一、お前何て言ってた?」
大人げない俺の抗議に広瀬は下を向いたままモジモジして答えなかった。
仕方がないから自分で記憶を辿る。
俺の幸せがなくなる……とか言ったんだっけ?
掛けていた眼鏡を外して涙の滲んだ目尻を拭いながら思い返して、広瀬の言わんとしていたことに漸く気付く。
そっか、1つため息をつくと1つ幸せが逃げる…ってやつだ。
俺が何度もため息ついてるから見てられなくなったのか……。
「ーーー広瀬、どうしてここにいるんだよ。
広瀬のクラスは今日授業ないだろう?」
声音を優しくして問いかけてやったら、広瀬がそろそろと顔をあげた。
この予備校は志望校別でクラスが細かく別れている。
広瀬がとっている『難関私大クラス』は
今日の授業はないはずだ。
「ちょっと用事があって…」
小さな声で答えたあと、広瀬はまたすぐに俯いてしまった。